前回Venetor SoundのVT-MCTLのMCプリアンプのことを書きましたが
今度新製品が出るとのことでわざわざVenter Soundの社長みずからモノラル・イコライザー・アンプVT-MPEQを持ってきてくれました。
今度のMONO専用のフォノイコはイコライザーカーブ付です。
イコライザーカーブは10inch、初期のMONO盤を買っているとホントに気になりますよねえ。
自分も欲しい、欲しいと思いながら何台か買いました。
やっぱり値段が手頃でいいなあと思ったのはMcIntosh C-8
イコライザーカーブも多数で多くの方も勧めていることだし、
…う〜ん、太くて濃いサウンド…
状態が今一だったのかも知れませんが好みに合わず…残念ながら縁がありませんでした。
McIntoshファンの方、すみません。
最近ですと高価な物ではEMT JPA66、FM Acoustic…他、マイナーメーカーを含めてちょこちょこっと発売していますが高すぎたりと…これといって気に入る物がない。
(っていうかこれは違うでしょ)を買ったりするのですがやっぱり満足なんか出来ません。
使わないまま終わるんですよねえ。
で持ってきてくれました。
ハンマートーンにVUメーター付、スタジオ機材風なところが自分好みです。
こだわりはイコライザーカーブのセレクターにも及び、わざわざ「ffrr(耳マーク)」「COLUMBIA」、「RCA」の文字などその会社の物に合わせることなんてこだわりなければできません…というよりここまでするとは…好きですねえ。
顔も大事ですが音は更に大事、とにかく聴いてみます。
試聴の装置は
ターンテーブル:Technics SP10 mk II、Audio Technica AT1501
カートリッジ:GE バリレラ
プリアンプ:Threshold NS10
パワーアンプ:Roland Reserch Model5
スピーカー:Altec604
Chris Connor「Sings Lullabyes of Birdland」US 10inchオリジナル。
まずは普通のRIAAカーブで、まあよく知っているサウンドですよね。いつもかけていますから
ただサウンド自体が静かで音が軽やかで歌う、そしてスクラッチノイズも細かい。
フォノイコとしての素性はとても良いと思いました。
Columbiaカーブかも?と思いかけてみます。
う〜ん、ヴォーカルの雰囲気は良くなったのですが、ちょっと付帯音がかぶっている感じです。
AESカーブでかけてみます。
AESカーブで聴くと少し音量が落ちますが、これはフィルターの関係で仕方が無いとのことヴォーカル自体が若干さっぱりした感じがありますがヴォーカルの節々「フーッ」という持続音の部分に気持ちの良い倍音成分がのったふくらみがあり、そこに感情がしっかり込められていることがよくわかります。
ヴォーカル自体の響きが生々しく実在感があり、ピアノの音も自然で素晴らしい。
RIAAで聴くとPianoの音に艶がなく音がかぶり、ベースは肥大して聞こえてヴォーカルをマスクしてしまい、ボーカルも肥大してしまっているために「ボワーン」という感じに聞こえます。
RIAAで聴き続けていればそんなことは分からず…「まあ、こんな音か」ですむんですが、
このAESカーブで聴いたら、もうRIAAでは聴けません。
次にLee Wiley「Night in manhattan」US 10inchオリジナル。
やはりこれはColumbiaカーブだろうということでColumbiaカーブとRIAAで比べてみます。
Columbiaカーブにすると抜けが良くなり、タイトルの「Night In Manhattan」もRIAAに比べると若干賑やかになり、Manhattanの喧騒が伝わってきそうです。
ヴォーカルもRIAAに比べてニュアンスが自然で、Lee Wileyの感情がこちらに伝わってきます。
更に驚くことに、ボビー・ハケットのトランペットはRIAAではオフ気味に聞こえ、バラードだとなんだか更に歳をとって少し頼り無い音で吹いている感じがするのですが、Columbiaカーブで聴けば音の抜けが良く、「ぱりっ」と、艶がある音色で、RIAAで聴くのとは全く、違う違う、なんだこんなに「ピシッ」としっかり吹いていたのか。
そりゃそうだよな、RIAAで聴くような音じゃ、クビになってもおかしくないものなあ。
聴かれたらきっと驚きますよ。
次にJune Christyの「Something Cool」US 10inchオリジナル。
これはAESでしょう、RIAAで聴いたらヴォーカルに音がかぶって付帯音がつきまとって正直聴きづらい。AESで聴いたらすっきり、こちらも気持ち良く聴けました。
最難関はLinn Taylor「I See Your Face Before Me」でしょう。
これはホントになかなか良く聴けないですねえ。
誰もが悩むと思います。
自分はずっとAESだと思っていました。
しかしAESでもダメ、Columbiaでもダメ、RCAもダメ、ffrrもダメ、当然ながらNAB、RIAAもダメ。
…でちょっと思い出したのです。
HAL’s Recordsの池田さんがこのことをたしかBlogに書いていたなあと…
まあ電話して聴いてみようかなと思い電話しました。
池田さんが言うには、「オーディオ屋さんとも話したんだけどこれはRIAAカーブのはずなんだけどイコライザーカーブの指定が間違っているんだよ。RIAAで聴いて良いんだけど、高音が出すぎなのでそれを落とせば大丈夫。トーンコントロールの低音を思いっきり上げて高音を2つ絞るくらいにすると絶品なんだよ。(アンプによって違うとは思いますが…)」と言っていました。
ですのでお悩みの方、是非、この様にしてお試し下さい。
…というわけでこれは当然ながら×ですねえ。ってそんなカーブないので当たり前ですが。
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Jazzを聴く方にはご存じ名店Hal’s recordsのWebページはこちらです。
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ヴォーカルばかり聴いたので、ちょっとはインスト物を
やっぱり気になるのは皆さんBlue Noteですかねえ。
ではMiles Davis「Vol.2」US 10inchオリジナル。
Blue Noteの10inchはAESカーブと言うことですのでAESと比べてみたいと思います。
RIAAカーブで聴くと低音がかぶっているため、若干もやがかかった感じになりますがAESではマイルスのトランペットはパリッとしていてベースのベースラインもキッチリ、クッキリ分かります。
目の悪い人が眼鏡を外して見ていた物が、眼鏡をしたとたんにくっきりした感じです。
いやあ…もう戻れません。
C8や…で聴いたときにはこんなには違わなかったというか、ちょっと合っているようなんだけど…でもなんだかこれがそんなに良いかなあ?と言う感じでですけどねえ~。
それほどオーバーホールしていない機材を使った為かもしれませんが…
いやあ、今回はさすがに参りました。
ただこれだけで試聴を終わりにするわけにはいきません。
RIAAでの音もかなりの好印象、いつも音が良さそうなアンプに出会った時にどうしても聴きたくなる
Sonny Rollins「Saxophone Colossus」US Prestigeオリジナル。
お持ちの方はご存じの様に「St.Thomas」でのドラムのシンバルの飛び散るようなサウンド、スネアの連打の乾いた音色、Rollinsの音の太さ、そして後半のサックスの吹き上がりの鋭さときたら、もうたまりません。
現在まで使用したことのあるPhono関連アンプはたくさんありますが
今は修理中の
Counterpoint SA5000(Full Mod)
これは「ふわっ」としたライブ感がたまらないフォノ・ステージを持っていて今でも好きです。(現在修理中、もうすぐ1年になりますが…いつ戻ってくるのでしょう?)
…というわけで写真無し。
一節には最強のフォノ・アンプと言われる真空管アンプです。
濃すぎる音がBlue Noteなんかには最高です。
Mark Levinsonより押しが強く、フレッシュだといわれる名フォノイコライザーです。
隣にあるのはWHP Model1といういったい何台作られたか分からないサンフランシスコのラジオ局にあったフォノイコです。
誰も知らない機材ってなんか良いですよねえ。
ヴォーカルを聴くと好印象の優れたプリアンプです。
今でも持っていますがそれほどは使いません。
他、今でも色々持っているのですが…
で、「どれが一番好きなの?」と聞かれたら
GASのThoebeが一番好きだと答えるでしょう。
私の好みとしては最強だと思っていました。(VT-MPEQを聴いてしまったらもう…)
GASのThoebe、上級機のThaedraとも比べたのですが、Thobeの方が筋肉質で好みでした。まあその個体が「当たり」だったのかも知れませんが…
このアンプを使ったことがない方に説明しますが、普通のプリアンプでシンバルが「チャーン」と鳴るところをこのアンプは「ッシャーン」といってシンバルが真下でみる大玉花火の様に耳に降り注ぎます。スネアの音が普通のアンプだと「ダッ」というところが「タンッ」と言う音でスネアの質感に溢れサックスはブロウの質感が手に取るようです。
久しぶりに引っ張り出して聴き比べました。
Thobeはやっぱり良いですねえ。相変わらずのこの質感。この現在の中古の価格でこのサウンドは正直ありえないと思います。
VT-MPEQにつなぎ替えて聴いてみます。
まず静か、レコードですので少しダストノイズや固有の細かなチリノイズが出るのですがこれが普通少しマスクされるのですがこのアンプで聴くとマスクされない。通常「チリチリ」と言う音だと思われるところが「チリッ、チリッ」としっかり細かく聞こえ、ノイズのフロアが聴感上低く感じます。ノイズを嫌い電源を電池にした効力だと思います。音の立ち上がりも速いので、このアンプで聴いていると音と音との間の空間がいままで使用していたフォノイコより更に強く感じられ、その間が如何に大事かと気付かせてくれます。
情報量が多く、スピードが速いので音の出が軽く感じ、抜けも素晴らしい。
サックスの吹き上がりもThoebeをこえて更にリアル、吹き上がりの太さと速さが違います。シンバルの音も、スネアのサウンドも…聴き比べなければ分からなかったことですがThoebeでは天井の抜けも少し悪い。
VT-MPEQにはかないません。
ヴォーカルの喉がふくらむような雰囲気のある「ふわっ」としたライブ感、サックスの喉を感じるような倍音、シンバルが天井から降り注ぎ、そしてスネアのリアルな「タンッ」と言うリアルな質感、素晴らしい。音楽を聴くなら絶対お薦めです。
当然のことながら今回も購入してしまいました。
本当に素晴らしい。
安い買い物ではありませんが、必ず満足して頂けると思います。
もしイコライザー購入で悩まれている方でしたら、間違いありません。
是非!ご検討ください。
ご注文はこちらから御願い致します。
http://www.sabotenrecords.com/vt-mpeq-6-brbr.html
余録
このアンプよく見ると裏面にFET使用の出力端子とオペアンプ使用の出力端子があります。
なんで2つあるんですかとVenetor社長に聴いたらVUメーターの為だけに使うのももったいないし、FETの方が音が良いんだけど、うちでやったらオペアンプでもこんなに音が良いんだよと教えたいと言うんです。
他のメーカーがオペアンプで作ってもこんなにいい音はしないはずって…でもFETの方が音がいいんでしょと聴いたらそうだけど…まあ自己満足の世界だなとのこと。
というわけでオペアンプでの試聴はしていません。
購入された方、是非試して下さい。
イコライザー・カーブについては試聴した際の聴感で確認しておりますが、当然のことながら私の耳が絶対と言うことはございません。
お客様が聞いた際の相違などの可能性もございます。
しかも聴感が絶対ということはございません。
どういう音作りをしてどのカーブで切ったのかはカッティングした方でなければわからないと思いますのでどうぞご理解下さい。
そして自分の「このカーブ!が当たりじゃない」という発見をして頂ければ嬉しく思います。