『ぼくはもっぱらレコード』古田直著を読んで


「これさえあれば何もいらない」
そうそう、心の底からそう思う。
これは「Ella Fitzgerald & Louis Armstrong / Ella & Louis」の章、冒頭の文章だ。
誰だってこのアルバムを聴いたときにはそう思うのだ。
これは知人の古田直さん、ヴィンテージレコード専門店ダックスープの店主が書いた本だ。
本のタイトルは『ぼくはもっぱらレコード』
ハードバップ以降のジャズ本が多い中、Sonny Rollinsの「Saxophone Colossus」の章やRudy Van Gelderの音質聴き比べ等のコラムがあるものの、その時代よりちょっと前のバップやスイングを中心に書かれた本だ。
Duke Ellingtonの項での〆の言葉「…さあ今日はどのコースにいたしますか?すべてがお勧めでございます」
そう、その通りだ。「彼の音楽はどれも美しく、美味しい」
Charlie ParkerとDizzy Gillespieの危険な関係、
Les PaulとPatti Pageの多重録音での火花を散らすリリース合戦の結果、
Frank Sinatraが40年代後半の失速からどうやって復活したのか、
Nat king Coleはどうして当時主流じゃないピアノトリオからはじまったのか、
Fats Wallerが歌詞書いた「ぼくのたったひとつの罪はこの黒い肌」、この突き刺さるような傷み、
Gerry Mulliganの名曲「Night Lights」が「Lonely Nights」になる悲しいストーリー等々、
そしてこんな方達までも!?と思うようなMal FitchやHadda Brooksまで当時のエピソードをまじえ愛情深く思いを巡らしていくのだ。
掲載されているアルバムを持っている人はもう一度そのアルバムを聴きたくなり、持っていない方はそのアルバムを聴いてみたくなるようなエッセイと和田誠さんとの対談集。
良かった! お勧めです。

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