音楽の好みと地域性



今回は『音楽の好みと地域性』の話です。

「Elvis Presleyってどんな人」と聞かれたら
「ロックの基礎を作ったキングと称される偉大な人」と多くの人がこんなふうに答えますよね。
でも黒人のレコード・ディーラーと話したときに彼はこう言ったんです。
「Elvis Presleyはクソだ。黒人から多くを盗み、そして何も還元しなかった。最低の奴だ!」
ちょっと言い過ぎと思う方もいるとは思いますが、黒人の側から見たらそれがある部分事実なんですね。

以前Hal’s Recordsの池田さんとお話させて頂いたときに「Helen Merrillってアメリカには結構ある?」と聞くんです。
「アメリカではなかなか見かけないですよ、ヨーロッパに買付に行っているんだからそっちの方がそれなりにあるんじゃないんですか」
「ヨーロッパの方は黒人にジャズの神髄があると思っているから白人のヴォーカルはあまりないんだよね」
「えっ、そうなんですか」
日本人の感覚だとちょっとビックリしませんか。ジャズ・ヴォーカルの神髄は黒人にありですよ。

日本人だとけっこうこんな感じです。
「お薦めのヴォーカルないですか?」
「Ella Fitzgeraldのバラッドとか心に沁みますけどどうですか?」
「いやあ、上手くても黒人は無理、ジャケ見ても楽しくないし、白人の可愛いのか美人さんがいいな」
そうなんですよね。女性ヴォーカルというのはおじちゃん達のアイドルなんです、だから可愛くないとダメなんです。
勿論そうじゃない方もたくさんいるのは知っています。
そう、でも日本人の多くは黒人の歌手より白人の歌手を好みますよね。

ジャズで考えると名盤って美女ジャケが多くないですか。
内容が同じくらいだったら美女ジャケの方を名盤としているような気がしませんか?
ちょっと内容は落ちるけど素敵な美女ジャケだから…なんて
そうこれもちょっとアイドル感覚が入っているんですよね。
勿論、自分だってElla Fitzgeraldがもっと可愛かったら良いのにとか思いますし、カバー写真は美女のほうが嬉しいですよ。そりゃ男ですから。
個人的には中身が一番大事とは思いますが、聴き方は人それぞれ、好きなアーティストを聞くのが一番ですよ。

またロックの話に戻りますがブラジルでは日本ではほぼ売れない*Ramatamが人気なんだそうです。
Ramatam誰だよって思う人も多いのではないかと思うくらい日本ではマイナーですよね。
何で人気があるのか分かりますか?
そう、あるブラジルの評論家が絶賛していたのが受け継がれて、これがロックの定番となって売れているとブラジルの友人から聞きました。
これって、あの映画*『シュガーマン 奇跡に愛された男』と同じ感覚ですよね。

その国、その地域によって大まかな流れがあるんです。
それはメディアや評論の影響だったり、先ほど書いたことを例にとれば人種の違いだったり、そういうところから音楽の良し悪しが生まれてくる感じがします。
そう考えるとそれぞれが違う様に思っているのだから良い音楽とか悪い音楽とかの意味って無いじゃないかと思ったりします。
音楽って見ている方によって形が違うということが分かると更に面白くなったりしませんか。
もちろん思った通りじゃなくてがっかりする方もいるとは思いますが。
私たちは良い音楽を求めて聴いていたりしますが人それぞれ、それぞれの人が好きなものが良い音楽でいいじゃないかと思う次第です。

次回は『音楽ストリーミング再生とジャズ喫茶等に思う事』です。
少し『レコード店を考えてみる』から離れてしまっていますがもう少しお付き合いをお願い致します。

Hal’s recordsはこちらから

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ブログ 『レコード店を考えてみる』 はこちらから

*Helen Merrill / You’d Be So Nice To Come Home To (Youtube)

*Ella Fitzgerald / Satin Doll (Youtube)

*Ramatam
元Iron Butterflyの Mike Pinera、JImi Hendrixと共に活動したMitch Mitchell、紅一点の美人ギタリストApril Lawtonをメインにしたちょっと小さなスーパーバンド、気になる方はyoutubeをどうぞ

*『シュガーマン 奇跡に愛された男』予告編(Youtube)